府大トピックス

府大名誉教授)大松先生のオープンイノベーション成功事例のご紹介

2018年03月06日(火)

~オープンイノベーションが生んだ世界初のニオイの可視化製品の実用化について

 

 府大の工学研究科(第5講座)の博士課程を修了され、その後工学部情報工学科教授、工学研究科情報工学分野の教授を歴任された大松繁先生(現在大工大客員教授)とコニカミノルタさんとのオープンイノベーションで生まれた「世界初のニオイの可視化」製品である「Kunkun body」の誕生を通じて、ビジネスコラボレーションの成功事例をご紹介いたします。
 

大松先生近影(大阪工業大学さまご提供) Kunkun body(コニカミノルタさまご提供)

 「Kunkun body」は2017年7月の記者発表以降、国内外のメディアに取り上げられ、さらにプロジェクト資金の調達のためのクラウドファウンディングでは、3ケ月で4800万円の資金調達を実現しています。
 
(1)ベースとなる基盤技術の形成
 そもそも、大松先生の専門は制御工学。この研究分野は、さまざまな現象を数式でモデル化する研究であった事から、ニューラルネットワークによるAI(人工知能)技術の研究にも取り組まれ、AI技術による画像や音、ニオイの識別技術に取り組んでおられました。
 さらに1995~2005年まではIEEEのニューラルネットワーク部門誌の副編集長を担当されていた事から、当時の最先端のAI技術に接しておられました。
 
(2)ニオイ研究のきっかけとその進化
 そんな折、2000年に府立大学のタイ人留学生からの「バンコクの街の悪臭がひどくこのニオイを測定識別する機器開発の研究をやりたい」という相談がきっかけで本格的なニオイの研究に着手されます。
 ビールの種別やメーカー識別研究、ワイン/コーヒーの香りの識別、さらに簡易口臭識別器の開発へと研究が深化され、2011年にはニオイ研究の成果により文部科学大臣表彰科学技術賞、電気学会からは電気学術振興賞・進歩賞を受賞されました。
 
(3)コニカミノルタとの出会い
 出会いは2015年のイノベーションジャパン(大学見本市)。
 当時、コニカミノルタは人の体臭を数値化する機器の開発を目指しており、大松先生がイノベーションジャパンに出展していた口臭識別器に着目され共同研究が始まりました。
 そんな折、2001年に資生堂が加齢臭の原因物質を突き止め、この加齢臭が話題となったことから、汗臭、ミドル脂臭を加えた3大体臭を数値化する機器の製品化をめざすことになりました。
 
(4)「Kunkun body」の仕組み
 「Kunkun body」はスマートフォンアプリと約100gのセンサーで構成されブルートゥース(BT)インターフェースで繋がっています。
 汗臭、ミドル脂臭、加齢臭の3つのニオイをそれぞれ10段階で識別し、総合評価として100段階の表示ができます。
 センサーには4つの半導体ガスセンサーを実装、さらに開発段階での膨大なニオイデータを学習させたニューラルネットワークをベースとする「ニオイ測定プラットフォーム」という基盤技術によりニオイの特性を分析しています。
 
(5)ビジネスコラボレーション成功の要因
 「Kunkun body」の製品化は大松先生とコニカミノルタとの出会いからたった2年。通常の開発期間の半分で製品化が実現しています。
 これには大企業の人材/資金力/ビジネスアイデアと、大松先生の持つ完成度の高い「ニオイ測定プラットフォーム」技術がオープンイノベーションによって融合し、さらにヘルスケア時代のニーズの高まりに呼応してタイムリーに製品化したことが、ビジネスコラボレーション成功の要因ではないかと考えます。
 
(6)今後にむけて
 五感情報では、9割が視覚情報とされており、視覚識別/物体識別といった研究が主流です。そのため嗅覚やニオイの研究まだそう多くありませんが、まだまだ解決すべき課題が多くあります。例えば、
・ 焦げたニオイ検知による、火災検知の高度化や調理器のスイッチを自動で切断する「ニオイスイッチ」の開発。
・ ヘルスケア分野の口臭/タバコ臭問題。
・ がんなど、特定の病気特有のニオイ検知による医療での活用、等。
 
 以上のように、私達の身の回りの課題解決に「ニオイ測定プラットフォーム」の活躍の場がまだまだ広がっています。
 なお、口臭の検知技術では、口臭に含まれる水蒸気が測定精度の障害になります。大松先生はこの水蒸気だけをはじくセンサー特許も保有されています。
 OBの皆様の新たなビジネスチャンスを広げるためにも、大松先生とのオープンイノベーションをご検討されてはいかがでしょうか。
 
注: 以上は下記の資料をもとに、NDC編集担当により再構成したものです。
・ 常翔学園広報誌 FLOW no.76 pp9-10ニューウェーブ(教育研究)
 「 世界に先駆けニオイを可視化クンクンボディ誕生」
 
編集後記
 上記の記事に関するお問い合わせや技術紹介についてご希望がございましたら、下記までご一報いただきますと、ご担当の部門のご紹介が可能です。お気軽にご相談願います。
 
お問い合わせ先メールアドレス:
ndc-edit@pe.osakafu-u.ac.jp

コメント 2 件

  1. 大松 繁 より:

    阪上様
     NDC会誌をお送り頂き有り難うございました。
    また、私(大松)のPR記事を載せて頂き、少々
    心苦しい気が致します。これからも研究に精進
    する積りです。NDCの益々のご発展を願ってい
    ます。

  2. 大松繫 より:

    今年3月31日に広島大学を退職し、〒599-8238 堺市中区土師町5丁19-1(自宅)へ帰ります。2名の認証が必要になっていますので、連絡がしばらくできないと思います。e-mailはomtsgr@gmail.comでお願い致します。

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