同窓生紹介 久保 友佳里さん

2012年05月19日(土)


お勤めの会社について教えてください。

この牧リハビリテーション病院は100床の回復期リハビリテーション病院で、平成17年にここ門真市の南端に開院しました。
病院の裏側には大阪府立スポーツセンター(通称なみはやドーム)があります。
毎年400名程度の患者さんが、脳血管障害や下肢骨折、頚髄損傷などの病気を発症され急性期病院から当院へ転院されます。そのうち約78%は在宅生活に戻られています。
ここには、私を含めると3人のMSW(医療ソーシャルワーカー)がいます。そのうち1人は主任、私ともう一人は2つの病棟をそれぞれ専従で担当しています。私たちを含めて医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護福祉士、栄養士、薬剤士、あと患者さんご本人やご家族がチームとなってそれぞれの力を発揮しながら、一日も早くご自宅での生活や職場に復帰できるよう支援しています。

転職されたことがあると伺ったのですが、以前はどういったお仕事をされていたのですか?またこの仕事をしようとしたきかっけはなんでしょうか?

卒業後は実は福祉に関する仕事ではなく不動産会社に勤めていました。MSWは人と話すことが多いので、その頃営業として経験したことが現在にとても活かされていると思います。
不動産会社を退職した後、地域生活支援センターに就職しました。そこでは、入院歴がある方の退院後の生活を支援していたのですが、ふと「この方たちは入院中はどういう感じだったのかな」「病気になられてどんな不安があったのだろう」「退院のためにどういった準備をしてきたのだろう」といった漠然とした疑問を抱いたのです。
その後結婚・出産を機に退職して主婦を数年したあと、次の就職先を探す時に、その時疑問に思っていたことがきっかけでMSWの仕事に就くことを決めました。
牧リハビリテーション病院は回復期病院なのでリハビリテーションが中心となり、急性期病院に比べて入院期間を長く設定できるので、患者さんやご家族ともより密に関わることができることも仕事として魅力を感じましたし、託児所があって子供がいる私にとって非常に仕事にとりくみやすい環境が整っていたのもここに来たいと思った大きな理由のひとつなんです。

お子さんがいらっしゃるのですね。育児との両立はやはり大変でしょうか?

そうですねもうすぐ5歳の娘ともうすぐ4歳の息子がいるのですが…朝は戦争、夕方も戦争、夜には大戦争という感じです(笑)
両立はもちろん大変ですが、子供が好きなので日々がんばっています。「子供が好き」といってもついよくしかってしまうんですが(笑)

お仕事は具体的にどのような内容でしょうか。

1人の患者さんの視点で説明しますと、まず入院支援を行います。
急性期病院からの紹介窓口となって、情報提供書などのやりとりをします。その後、入院のために医師による一次判定、病棟師長などを含めた二次判定、ご家族面談による最終判定を行い入院受け入れを決めていきます。
次は、入院中の支援を行います。
介護保険制度や自立支援制度など様々な制度について紹介し、申請の方法を説明したり居宅介護支援事業所(介護保険などの手続きをご本人やご家族のかわりに行う事業所)や行政との連絡調整をします。
最後は、退院支援です。
担当のリハビリスタッフと共に、退院前に患者さんのご自宅訪問に同行し、手すり設置や段差解消などすごしやすい環境をつくるための提案をします。また、地域の居宅介護支援事業所やヘルパーなどのサービス提供事業所などを交えて話し合うために日程の調整などを行ったり、同席したりします。もしなんらかの事情によりご自宅退院が困難な患者さんには、施設入所の支援を行っています。

お仕事で外出される日も多くなってくるのでしょうか。

はい。週の1/3から1/4は患者さんのお宅を始めとしたいろんな場所を回るので、院内にはいません。あと院内での業務の5~6割は電話ですね。
そういえば少し前ある医療機関に電話をした際、『そちら、関東方面の病院ですか?』と聞かれました。私の話し方が標準語のイントネーションに聞こえたのだとか。
生まれは浜松(静岡県)なんですが、大阪に来て十数年…まだ関西弁をマスターしきれていない自分にがっかりです(笑) ちなみに子供も微妙な関西弁に育ってしまってます(笑)
話はそれましたが、院内にいる残りの時間は患者さんとの面談を行っているか、ここに座って色々仕事している間に患者さんが来られ世間話をするといったところでしょうか。

今取材中にも、何人か話しかけてくださいましたね。

いつもこんな感じでここに座っていると絶対誰かにつかまります(笑)
でも、世間話をしやすい関係になれるというのは、他の病気の相談や暮らしていく上での相談もしやすくなるということだと考えてますのでいいことだと思っています。

人と話をするコツってありますか?

コツというか、さっきも言いましたがほんとうに人と話すことが好きなんです。家族全員がそうでしたから(笑)不動産会社での営業の経験も人と話すことの積み重ねでしたし、あとは大学時代のバイト経験も活きてるのかなと思っています。
例えば居酒屋やカラオケでバイトをしていたのですが、ここでは人との接し方が身についたのかなと思います。特に、目上のお客さんも多かったのですが、今入院されている患者さんもほとんどが目上の方なので役立っているのかな、と。
他にも回転寿司屋でもバイトしましたが、流れ作業が多かったので物事の優先順位を考えれるようになったと思います。さっき言った仕事内容は一人の患者さんを例にして時系列にお話ししましたが、それがこの病棟の人全て並行して進んでいるので、この経験がなければもっと苦労したかもしれません。
あと、塾の講師もしたことがあるのですが人に対して物事を説明するのはこの経験から学べているのかもと思います。
大学時代を振り返ると、今更ながら「もっと勉強しておけばよかった」と思うこともありますが、大切なのは勉強だけじゃないと思います。人と接することは、「対人援助専門職」の原点であると思うので、今学生のみなさんには勉強ももちろんですが、たくさん遊んだりバイトをして人と接することを大切にしてほしいですね。

お仕事をされていて、苦労をする点とやりがいを感じる点を教えてください。

「地域との橋渡し役として患者さん達がすごしやすく生活できるよう支援していく」というこの仕事自体にやりがいを感じています。
もちろん患者さんの中には、ご親族と疎遠であったり経済的にお困りの方もおられます。転居先探しや引越しのお手伝い、各種制度の申請代行や買い物代行、行政・銀行への同行や金銭管理等を行なうこともあり、本当に大変なケースがたくさんあります。
ですが患者さんが退院される時、ご本人やご家族の方に『いろいろありがとう』と笑顔でおっしゃっていただけると、とても嬉しいです。
患者さんとの出会いはまさに【一期一会】で、その方の人生の一部に関わらせてもらったことに感謝の気持ちも忘れないように心がけています。

最後に、今後の夢や目標がありましたら教えてください。

育児経験を通して児童福祉の分野にも興味がありますので、いつの日か保育士資格も取得したいと思っています。専業主婦時代にもチャレンジしたことがあったのですが、残念な結果に終わってしまいましたので…
もちろん、今の仕事をすぐに辞めたいという話ではなく例えば老後にでもパートという形でもいいので子供たちと関われたらと思っています。
また、元々心理にも興味があったので児童心理にも魅力を感じています。実際に患者さんたちのお話を伺っていても、子供のころの経験が大人になってからも影響しているのではないかということが感じられますので。
実は、他にも興味のあることはたくさんあるのですが、話し出すとどんどん広がってしまいますのでこの辺でやめておきましょう(笑)