母校だより

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薬学部の近況報告 薬学部長 服部尚樹(平成21年着任)

 立命館大学薬学部は、今年、生命科学部と共に創設12年目を迎えました。立命化友会、病院薬剤師会、薬剤師会の皆様方には、日頃からさまざまな分野でご支援を賜り厚く御礼申し上げます。私、2017年度に薬学部長になり3年間務めさせて頂きましたが、今年度からもう一期3年間薬学部長を務めることになりました。どうか宜しくお願い申し上げます。
 
 今、この原稿を書いている8月24日は例年ですと夏休みで、学生は友人と一緒に旅行をしたり、故郷に帰省して家族とゆっくり過ごしている時期です。薬学部の学生は、今日も朝から医療薬学実習などの実習を全員マスクとフェースシールド(またはゴーグル)を着用して受けています。新型コロナウイルス禍の影響で春学期の通常講義が全てオンラインとなり、どうしても対面でないと出来ない実習を夏休み期間に集中して実施しているためです。新型コロナウイルスは人の交流を止めました。生協食堂でも「食事中の会話や携帯電話の操作はお控えください。食事が終わったらすぐにお席をお立ち下さい。」といったアナウンスが常に流れています。研究室でも密にならない様に同時に研究できる人数に制限がかかっています。Toronto大学とSickKids病院での海外臨床実習プログラムも中止となり、Toronto大学からのAdvanced Pharmacy Practice Experience (APPE)プログラム生の来日も中止になりました。現状仕方がないと思いながらも、やはり大学の魅力は、講義、実習、演習、クラブ活動、サークル活動などにおける学生同士、学生と教職員とのリアルな交流が出来るキャンパスにあると思っております。新型コロナウイルス感染のリスクを最小限に抑える工夫をしながら、バーチャルな手法を併用しつつも極力リアルな学びの場を提供していく必要があると感じております。
 
 さて、病院や薬局で活躍し、地域社会の医療の担い手になれる薬剤師の育成を目指す6年制の薬学科が設置されたのは2008年、これまでに7期生までで678人の卒業生を輩出致しました。今年の進路状況は、薬局(45.3%)、企業(28.0%)、病院(24.0%)、公務員(2.7%)、大学院(1.3%)の順で、例年に比べやや薬局が多い印象があります。薬学部の教員には、大学の通常の教育と研究に加え、薬剤師国家試験に学生を合格させるという使命があります。更に実務実習の際の薬局・病院訪問など他学部にはない苦労がありますが、薬学部の教職員は日々奮闘しております。しかしながら、今年2月に実施された第105回薬剤師国家試験は私立薬科大学56校中24位と前年度の11位から大きく順位を下げてしまいました。他大学薬学部は薬剤師国家試験対策専門の教員を配置するなどして国家試験合格率を少しでも上げるために非常に力を入れてきています。本学薬学部は普段の学びの延長線上に国家試験があるという考えのもと、卒業研究も実習もしっかりやって参りました。その基本姿勢は維持しつつも、もっと国家試験対策に力を入れないといけない時期にきていると反省致しております。AI、IoTの時代を迎え薬剤師の仕事も大きな転換期を迎えています。これまで薬剤師固有の仕事であった調剤業務の一部は機械にとって替わられていくことが予想されます。対物から対人へ。患者さんを中心にした薬物治療全般に責任を持って積極的に参画できる薬剤師の育成に務めて参ります。
 
 高度の知識と技能、問題発見・解決能力を持ち、最先端の創薬研究を遂行出来る人材の育成を目指す4年制の創薬科学科は2015年に開設されました。昨年度、薬学研究科薬科学専攻修士課程が設置され、来年度には薬科学専攻博士課程後期課程も届出で設置されることが決まりました。これで薬学専攻博士課程とともに薬学研究科の研究体制がやっと整うことになりました。日頃ご支援を頂いております学内外の皆様方に、心より御礼申し上げます。創薬科学科ですが、これまでに2期生までで74人の卒業生を輩出いたしました。今年度は卒業生の78%もの学生が薬科学専攻博士課程前期課程に進学し、改めて非常に研究マインドの高い学生が集まっていることを実感致しました。学部卒の学生も、3人国家公務員試験に合格し、その内の1人は超難関の国家公務員総合職試験に合格して文部科学省に入省致しました。創薬科学科にはチャレンジ精神旺盛な学生が本当に多いと感じております。多くの学生が各自の夢を叶えられる職場に就職出来る様、これからも研究のレベルを上げていきたいと思っております。
 
 私の臨床薬理学研究室からは、これまでの7年間で39人の学生が社会に巣立っていきました。例年彼らが研究室のOB•OG会を開いてくれるのですが、今年は新型コロナウイルス禍のためやむなく中止致しました。いつもその集合写真を載せておりましたが、今年は代わりに彼らが送ってくれたメールの一部をご紹介致します。彼らのこういった思いが、私が学部長として立命館大学薬学部のために全力を尽くす支えになっています。最後に、来年はOB•OG会が開けられることを心から願い、これからも卒業後、「立命館で学んで良かった」と思ってくれる卒業生を一人でも多く輩出する様、頑張りたいと思っております。
  • いかがお過ごしでしょうか。OBOG会中止とのこと大変残念です。(中略)私は今春から感染症部門に異動しまして、コロナ対応に追われる日々です。抗体検査もメジャーになりつつあり、研究室を思い出す機会が増えました。 非常に忙しいですが同時にやりがいもありますし、今しかできないことでもあるので一生懸命勉強しようと思います。また先生にお会いできる機会を楽しみにしています。(1期生)
  • 服部先生のお陰でここまでやってくることができました。3年間という長い間、熱心にご指導して下さいまして、先生には感謝しかありません。4月からは新社会人ですが、研究室で学んだ事を生かしながら頑張りたいと思っています。(7期生)