母校だより

薬学部の近況報告 薬学部長 服部 尚樹(平成21年着任)

 立命館大学薬学部は、今年、生命科学部と共に創設11年目を迎えました。立命化友会、病院薬剤師会、薬剤師会の皆様方には、日頃からさまざまな分野でご支援を賜り厚く御礼申し上げます。
 病院や薬局で活躍し、地域社会の医療の担い手になれる薬剤師の育成を目指す6年制の薬学科が設置されたのは2008年、これまでに6期生までで589人の卒業生を輩出致しました。今年は、病院、薬局、企業への就職の他、国家公務員総合職(厚生労働省)をはじめ6人が公務員に、6人が大学院博士過程に進学し、チャレンジ精神に満ちた人材が育っていると感じました。薬学部の教員には、大学の通常の教育と研究に加え、薬剤師国家試験に学生を合格させるという使命があります。更に実務実習の際の薬局・病院訪問など他学部にはない苦労がありますが、薬学部の教職員は日々奮闘しております。今年2月に実施された第104回薬剤師国家試験は私立薬科大学57校中11位で、昨年より順位を3位上げました。しかしながら、国公私立のほぼすべての薬学生が受験した薬剤師国家試験直前の大手予備校の模擬試験で全国2位だっただけに、少し残念な結果でした。海外での薬剤師の働き方、海外のhealthcare システムを学ぶために立ち上げたカナダのトロント大学薬学部への留学プログラムも3年目を迎え、国際社会で活躍出来る英語教育を展開しております。カナダの薬剤師は調剤をせず、薬の効果、副作用のチェックと患者への服薬指導が主な業務になっています。AIの時代を迎え、日本の薬剤師の仕事も同じ方向に進むことが予想され、患者を中心にした薬物治療に積極的に参画できる人材の育成に務めて参ります。
 高度の知識と技能、問題発見・解決能力を持ち、最先端の創薬研究を遂行出来る人材の育成を目指す4年制の創薬科学科は2015年に開設されました。今年始めて33人の卒業生を輩出し、その内、約80%が大学院に進学しました。改めて非常に研究マインドの高い学生が集まっていることを実感致しました。学部卒の学生も、日本新薬、久光製薬、全日空など大手企業に就職していきました。海外での研究を体験し、研究への更なるモチベーションを高めるため立ち上げた、アメリカのYale大学、カナダのToronto大学への留学プログラムに参加する学生も出てきました。今後ますます研究の高度化に務めて参ります。
 私の臨床薬理学研究室からは、これまでの6年間で30人の学生が社会に巣立っていきました。先日、彼らが研究室のOB•OG会を開いてくれました。写真はその時のもので、多くの卒業生が全国から集まってくれました。病院、薬局、製薬企業、CROなどの治験会社、県庁、通産省、コンサルティング会社など、いろんな職場でみんな元気に頑張っている姿を見てとても嬉しかったです。これからも卒業後、「立命館で学んで良かった」と思ってくれる卒業生を一人でも多く輩出する様、頑張りたいと思っております。

生命科学部の近況報告 生命科学部長 菊地武司(平成16年着任)

 生命科学部長・生命科学研究科長の菊地武司です。今年度四月より、小島一男先生の後任として学部長を拝命しております。立命化友会の皆様には平素より生命科学部・生命科学研究科の研究教育にご支援・ご協力を賜り誠にありがとうございます。
 立命館大学では、立命ファミリーの輪を広げまた強固にするために、かつて父母教育後援会の一企画で「都道府県懇談会」といっていたものを「一日キャンパス」に名称を変え、さらにアカデミック講演会というような企画も加え、単にそれぞれの地域に赴いて、父母の方々のお話をお聞きするだけでなく、立命ファミリーとして日頃の研究・教育に触れていただき、また卒業後も立命館に関わるというように校友会活動を広げようとしております。
 皆さんご承知のとおり本学では、現在R2020の完成期を迎え、さらにそれを発展させるべくR2030に取り組んでおります。R2020ではグローバリゼーション(国際化)とダイバーシティ(多様性)をキーワードとして、留学生の受け入れ、海外への学生の派遣、さらにはダイバーシティの一つの指標でもある女性教員の積極的任用を生命科学部でも行っております。英語基準の大学院留学生数も増加し、それぞれのコースの研究室に留学生が日本人とともに研究に励んでいる姿もそんなに珍しいことではなくなってきました。日本人院生にとっても大きな刺激になっていると思います。R2030に向けさらに留学生の受け入れを進める所存でございます。また日本人学生の海外派遣も力を入れており、カリフォルニア大学デービス校への学部学生の派遣、GRGP(Global-ready Graduate Program) 制度を利用した大学院生の海外への大学・研究機関へ留学する院生の数も少しずつ増えているように見受けられます。
 2020年度以降18歳年齢人口の減少が予想され、大学もそれに備え様々な方策を検討せねばなりません。生命科学部も例外ではなく、これまでと同じ入試施策を続けるわけには参りません。今後は、新たな入試施策に挑戦し、さらにはこれからの激動の時代を乗り切るための学部の在り方についても斬新な試みが必要となります。さらに2020年度より順次小中高教育の学習指導要領が大きく変わることが決定しており、今後は探求型授業を取り入れた教育がなされるということです。数年後にはそのような教育を受けた学生が大学に入学することになります。そのときには、それまで小中高校にて受けてきた先進的な教育に比べ、大学では旧態依然とした教育を行っていれば、受験生から愛想をつかれるのは間違いありません。これからの大学教育のあり方を我々は追及せねばなりません。
 また昨今注目を受けているのはいわゆるSTEAM教育です。これは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の総合的教育環境のことです。このように幅広い教育ということも大学に求められており、我々も新たな大学教育を模索せねばなりません。現在は様々な領域において変革を求められており、大学も、従って立命館大学生命科学部も例外ではありません。今は変革の時です。
 さて、今年は、立命館大学校友会は設立100周年目にあたります。改めまして立命館大学、そして校友会の伝統の深さを認識いたします。今年10月には記念の企画がいろいろ計画されており、特に理工系学部では記念講演会を企画しております。講演者は宇宙科学研究所所長の國中均氏で、はやぶさ計画についてご講演いただけることになっております。この企画についても皆様方のご支援を賜ればと存じます。
 これからの生命科学部・生命科学研究科のさらなる発展を追求していく所存でございます。皆様の一層のご支援・ご援助をよろしくお願い申し上げます。

「定年退職にあたって」 岡野 友信(平成22年着任)

 私が立命館大学薬学部に着任したのは2010年4月でした。当時薬学部の1期生はまだ3回生で、実務家教員としての私の役目は、彼らに実務前実習を受けさせて、実務実習に行くための必須のライセンスであるCBT(知識を評価する客観的試験)やOSCE(技能・態度を評価する客観的試験)に合格してもらうということでした。そして実務実習をさせるための病院や薬局に彼らを行かせなければなりません。しかし実務前実習については誰がどこで何を教えるのかが何も決まっておりませんでしたし、また彼らの実習先の確保さえできておりませんでした。まず臨床経験のあるベテランの薬剤師を探してきて嘱託講師として採用し、実習を教えてもらうことにしました。「餅は餅屋」とはよく言ったもので、これはかなりの効果を上げることになりました。以前、臨床とは全く関係のない先生が一夜漬けで覚えた調剤を学生に教えているといった話を聞いたことがありますが、そのようなことはこれから実臨床で実習する学生あるいは就職する学生にとってあまり勧められる話ではないと思います。学生に不利益をもたらすだけでなく、その道で業績を上げておられる先生方にとっても、このような煩わしいことに時間を取られていると「科学の進歩が1日遅れる」と私は考えます。さらに嘱託講師には、OSCEの評価者や、実習先への訪問指導もしてもらうこととしました。嘱託講師にとっても自分達の教えたことが、学生をちゃんとOSCEに合格させるのに役立っているのか、あるいは臨床現場で通用するのかの確認にもなるだけではなく、実務家教員以外の先生方の施設訪問の負担を著しく軽減し(学生1人につき3回訪問)、まさに一石三鳥でありました。またサイエンスコアに南棟を増築してもらうことにより、細やかな実務前実習が可能となり、OSCEの際の動線確保も可能となりました。
 薬剤師国家試験合格率についての課題はたくさん残されていますが最悪というほどでもありません。しかし合格率が突出してよくないと、授業料の高い当薬学部は、優秀な学生を他大学に取られてしまい、そうするとまた合格率が下がるという悪循環になる可能性があります。卒業後の進路ですが、病院や企業に知り合いがたくさんいるので、学生を就職させるのには自信がありました。薬学部創設時は、薬学出身の先生が少なかったこともあって多くの学生が進路相談で私のところに来ました。1期生から6期生までで約80人分の病院採用の推薦状を書きました。もちろん一人につき1通ではなく複数の推薦状を書いてあげた学生もおりました。今もほとんどの卒業生の就職先を把握しており、転職した学生や結婚した学生についてもできるだけ記録を塗り替えるようにしております。 
 無事定年を迎えることができたのは先生方や事務の方々の温かいご支援があったからであると感謝しております。今年4月からは特任教授として立命館大学で仕事を続けさせていただけることになりました。教授会・研究科会議には出なくてよくなりましたが、授業が前期・後期1科目ずつ、実習は前期2日、後期3日そして学生の実習先への訪問指導19人と現役の時とあまり変わらず、また実務実習委員会、OSCE委員会やキャリアと行う就職に関する会議にもオブザーバーとして参加させていただいております。実習のマニュアルに記載されている緊急連絡先が、今年度も私のメールアドレスになっているため、4月以降に起こった実習中のトラブルにも前年度同様毎回対応しております。嘱託講師の任用期間は5年ですので、新しい嘱託講師を見つけてくるのも私の仕事になっております。これからも立命館大学のためにお役に立てるならなんでも喜んでやりたいと思っておりますが、案外皆様の邪魔をしているだけかもしれません。そんなとき親切な忠告をして下さる方がおられたらその方に感謝し、素直に引退いたしますのでよろしくお願いいたします。

新任教員のご紹介(2019)

今年度に生命科学部・薬学部に着任された先生方です。
 
  1. 氏名
  2. 専門分野
  3. 所属学部学科名
  4. 着任ポスト
  5. 最終大学院 
  6. 学位
  7. 前任ポスト
  1. 中山 勝文
  2. 免疫学、微生物学
  3. 薬学部薬学科
  4. 教授
  5. 順天堂大学大学院医学研究科
  6. 博士(医学 順天堂大学)
  7. JSTさきがけ専任研究者
  1. 林 宏明
  2. 天然物化学、薬用植物学
  3. 薬学部薬学科
  4. 教授
  5. 京都大学大学院薬学研究科博士課程
  6. 博士(薬学 京都大学)
  7. 岩手医科大学 薬学部 准教授
  1. 金子 光佑
  2. 有機材料化学
  3. 生命科学部応用化学科
  4. 助教  
  5. 立命館大学大学院 理工学研究科
  6. 博士(工学 立命館大学)
  7. 福岡工業大学工学部生命環境化学科 博士研究員
  1. 山本 悠策
  2. 触媒化学
  3. 生命科学部応用化学科
  4. 助教
  5. 立命館大学大学院 生命科学研究科
  6. 博士(理学 立命館大学)
  7. 院生
  1. 豊竹 洋佑
  2. 分子微生物学、生化学
  3. 生命科学部生物工学科
  4. 助教
  5. 京都大学大学院
  6. 博士(農学 京都大学)
  7. 院生
  1. 尾上 靖宏
  2. 生化学、蛋白質科学
  3. 生命科学部生命情報学科
  4. 助教
  5. 総合研究大学院大学
  6. 博士(理学 総合研究大学院大学)
  7. 熊本大学 博士研究員
  1. 泉川 友美
  2. 分析化学、生化学、分子生物学
  3. 薬学部創薬科学科
  4. 助教
  5. 神戸薬科大学大学院博士後期課程
  6. 博士(薬学 神戸薬科大学)
  7. 京都産業大学 総合生命科学部 研究助教
  1. 井上 大輔
  2. 薬剤学
  3. 薬学部薬学科
  4. 助教
  5. 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士後期課程修了
  6. 博士(薬学 岡山大学)
  7. 就実大学薬学部 助教
  1. 川口 高徳
  2. 生化学・生理学
  3. 薬学部 薬学科
  4. 助教
  5. 立命館大学大学院
  6. 博士(薬学 立命館大学)
  7. 院生
  1. 根来 亮介
  2. 分子生物学
  3. 薬学部 創薬科学科
  4. 助教
  5. 大阪大学大学院薬学研究科
  6. 博士(薬学 大阪大学)
  7. 院生
  1. 藤野 智恵里
  2. 薬物動態学
  3. 薬学部 薬学科
  4. 助教
  5. 広島大学大学院
  6. 博士(薬学 広島大学)
  7. 院生

シンポジウムのお知らせ

2019年9月2日(月)に、立命館大学グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)の「暮らしのスマート・エネルギーイノベーション研究拠点」が主催するシンポジウムが開催されます。
 

なお、R-GIROは、「21世紀の持続可能で豊かな社会の構築」という研究理念のもと、いくつかの学内提案型公募研究(研究拠点形成)を実施している機構です。今回の企画には登場されませんが、生命科学部・薬学部の何名かの先生方も「研究拠点」を作り、研究を推進されています。



【日時】2019年9月2日(月)13時15分~16時45分(開場12:45)
                             *懇親会 17時00分~18時40分

【場所】メルパルク京都 5階会議場A「京極」(懇親会 8階「大文字」)
       
【アクセス】JR京都駅(烏丸中央口)から東へ約1分
                     https://www.mielparque.jp/kyoto/access/

【参加費】無料(懇親会含め無料)

【参加定員】200名

 詳しくはこちらのチラシをご覧ください。
ご参加くださる方はこちらからお申込みください。http://bit.ly/energy190902

保護中: 卒業パーティが開催されました(2019年3月22日)

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小島一男教授 退職記念講義を開催しました(2019年3月4日)

 2019年3月4日(月)F201号教室において、生命科学部応用化学科小島一男教授の退職記念講義が行われた。
 講義では、「これまでの無機分光化学研究を振り返って」と題して、研究初期から現在までの研究の成果を研究室の卒業生との共著論文を資料として、網羅的に解説された。「蛍光材料や光触媒等の光機能性材料」の研究を卒業生に語りかけるように振り返られた。卒業生からの質問もにこやかに答えられていたことが印象的だった。
 講義終了後、生命科学部と卒業生から花束が、応用化学科から記念品が贈呈された。当日は開講期間ではないにもかかわらず120名ほどが集い、大盛況の中、退職記念講義は終了した。

岡野友信教授、木村富紀教授の退職記念講義(2019年2月14日)

 平成31年2月14日に岡野友信教授と木村富紀教授の退職記念講義が開催され、会場座席は学生、卒業生、教員で満席となった。
 岡野先生は、平成20年に薬学部教授に着任され、薬剤師臨床教育の要としてご活躍されました。とりわけ、病院・薬局実務実習の立ち上げや実習先の確保に尽力され、就職委員として学生の病院就職にも多大な貢献をされました。そのおかげもあり、卒業生の病院就職先は、他の伝統ある薬科大学に引けを取らない、いやそれ以上とも言える実績に繋がっています。講演では、各臓器におけるペプチド輸送担体の研究や、先生がどのように広い人間関係を築いてきたかについてご紹介され、まだまだ歴史の浅い本学薬学部についての思いを述べられました。
 木村先生は平成19年に理工学部教授として着任され、平成20年度からの薬学部の開設準備に尽力されました。平成20年に薬学部教授に就任されて以降は、感染症や微生物に関わる専門教育を担当されるとともに、平成27, 28年度は副学部長を務められ、薬学研究科の開設やトロント大学薬学部への留学プログラムの構築にも尽力されました。また茨木市や草津市において新型インフルエンザ等対策に関する公職も務められました。講演では、2度にわたるイギリス留学のご経験や、長年の感染症に関する研究や非コードRNAによる遺伝子発現調節の研究についてご紹介され、研究者、薬剤師の卵たちに熱いメッセージを送られました。
 両先生には、平成31年度より薬学部の特任教授として引き続き教育活動にご尽力いただきます。
講演後に卒業生から花束を贈られ微笑む二人
(写真:立命館大学薬学部 平先生提供)