雨降れば雨降るを思い、風吹かば風吹くを思い、雪舞わば
雪舞うをぞ思う。これ すなわち熊大学生寮健児の日本の国おこしとぞ知る。
ハイソサエティのメッチェンと恋をするのが真実の恋であって、
高田原の姐ちゃんと恋をするのは真実の恋ではないと一体誰れが云えようか。
酒は飲むべし百薬の長、酔うて枕す二本木の宿、醒めては握る天下の剣。
花は摘むべし山合の百合花、啼鳥は聞くべし老梅の鶯、
女には抱かれるべし これ又 無常の快楽なり。
いざや歌わんかな、浸らんかな、偲ばんかな 我らが若きロマンの歌
   ・・・・アイン、ツバイ、ドライ サ。
火の国 熊本に この身をおいて、四歳の月日は早や立ち去りぬ、
夜の学生寮を訪ねて見れば、麻雀牌の音がしきり、
今日は高田原か明日又二本木、流浪の生活いつまで続く、
今じゃこうして怠けているが、末は見ておれ内閣総理大臣
(ああ、しかしこれも今となっては はかない夢だったのか、そこで次の一小節、)
定年迎えて永久休み、女房は愚痴るよ、粗大ゴミ 濡れ落ち葉
一人で寂しく暖簾をくぐる、屋台の酒のほろ苦さ
あゝ人生の裏町街道 吹くよ嵐が俺らを呼ぶぜ

1. 易水流れ寒して 曠原草は枯れ果てぬ
  見よや龍南 龍は臥し 鉄腕撫する健児あり
  
2. 西海月の澄むところ 武夫原頭に書を抱いて
   鳴かず飛ばずに こゝ暫し 鼓空の翼 養わん

3. 仰がば蘇峯のふさば絵津  我 眼に見しな濁と汚と
   歌はば人を醒ますべく   泣かば熱涙 色も濃く

4. 羽色そろわね大鵬の  胸の思ひに たぐへつゝ
   青春 夢も幸はあり   通ふもゆかし告天歌

1. 椿  花咲く南国の  二更を過ぐる星月夜
   オリーブの森に焚火は燃えて 歌寮朗らかに酒宴の
   感激深き 若き日の 誇りを永遠に忘れじな

2. あゝ南国の沖遠く 黒潮の流れは尽きずして
   白金の太陽に溢れては はからずも入る白日夢
   生命の旅の寂しさに 蘆生の夢も今しばし

3. 三年の旅の途すがら 山の霊気を憧るる
   旅人若く月淡し 熱き情に身もこがす
   阿蘇の処女の恋歌に泣け 今宵の宿は湯の村か

4. 冬去り春の訪れば 球磨の流も水暖み
   破壊の古城に草もえて ラインの春を思はする
   瀬音も高く青春の 幸を讃へて逝くものを

5. 今 蕭条の秋たけて 龍田の丘の小夜曲に
   遠きふるさと懐しみ 青き哀傷を恋ふるとき
   故郷の方に明星も 黙示の色に冴ゆる哉